ほんの一冊 | 客室乗務員の誕生ー「おもてなし」化する日本社会

「旅の本屋 via」がセレクトした書籍をご紹介。新刊で集めたものを中心に、ほんの一冊取り上げて、ご紹介いたします。

日本の客室乗務員の歩みを取り上げたユニークな新書

空の旅には欠かせない存在である、客室乗務員。『客室乗務員の誕生』は、その歩みをときほぐしたユニークな新書です。

わたしも、海外旅行に出かけるようになってから、いろいろなエアラインに乗ったことがありますが、過去、欧米の航空会社のかなりビジネスライクな乗務員の応対に、日本の乗務員とはずいぶん違うのものだ、と思ったことがあります。

自国のスタイルが標準と思っていると、実はガラパゴス的発展をしていた……。昭和生まれの方であれば、スチュワーデスからキャビン・アテンダント(CA)に呼称が変化したことを経験していると思います。英語だとそうなるのかと思っていたら、それもまた和製英語だったのです。

『客室乗務員の誕生』の内容

日本独自の発展を遂げ、就職先として盤石の人気を誇る「CA(キャビン・アテンダント)」。我々はそこにどんな期待を投影してきたのか。エアガール、エアホステス、スチュワーデス……呼称/役割ともに変遷してきた日本の客室乗務員の歴史を通観し、「接客マナー」と「自分磨き」の技法と思考が独特な「おもてなし」の源流となっていく過程を考察する。

『客室乗務員の誕生』の目次

はじめにー客室乗務員という日本文化

1章 日本初の「業務」―エアガールの誕生 (一九三一‐四一年)
 1 「客室」と「乗務員」の出現
 2 「空飛ぶ看護師」たちのアメリカ
 3 国策エアガールと嘔吐袋

2章 雲の上の「責務」―着物姿の「客室兵」 (一九五二‐六六年)
 1 敗戦国のスチュワーデス
 2 パンナムと日航
 3 「菊の御紋」の機内サービス
 4 「客室兵」たちの「責務」

3章 低落する「職務」―ジャンボ時代の混迷 (一九六七‐八二年)
 1 「空飛ぶ日本館」のミニスカート
 2 ジャンボジェットという「事件」
 3 「ディスカバー・ジャパン」と鉄道の旅
 4 「アンノン族」は飛行機に乗らない
 5 空港に吹く向かい風

4章 見出された「任務」―接客マナーと「自分磨き」 (一九八三‐九三年)
 1 「訓練センター」と職業意識の高まり
 2 『スチュワーデス物語』の世界
 3 「感性の訓練」という「任務」
 4 「自分磨き」と「自分探し」の時代

5章 相続される「おもてなし」―「CA」の思考 (一九九四‐二〇一二年)
 1 キャビン・アテンダントの誕生
 2 「アルバイト・スチュワーデス」問題
 3 社会沈下と「CA」の浮上
 4 「おもてなし」と品格労働

おわりに―「おもてなし」化する日本社会 (二〇一三‐二〇年)

あとがき

229ページ

『客室乗務員の誕生』の新聞書評

大分合同新聞 2020年3月20日 コラム

『客室乗務員の誕生』より

いまの日本社会で客室乗務員たちが先導する日本の「おもてなし」には、理不尽な精神的従属を求める「感情労働」には納まらない「何か」があるように思える。
いつから客室乗務員には「おもてなし」が期待され、その達人になることが究極の「任務(mission )」となったのだろうか。そして日本の「おもてなし」に見出された「何か「とは、いったい何だろうか。(はじめに)

「はじめに」にあるように、感情社会学を唱えたアメリカの社会学者ホックシールドの感情労働に収まらない「何か」が、日本に生まれたCAのおもてなしのキーに。客室乗務員への見る目が変わる一冊です。

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