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疫学を生んだ、ジョン・スノーの調査

一週間ほど前にNHKで、「下水で新型コロナ第2波予兆把握」というニュースが出ていました。

東京都は、都内の処理場で採取した下水に含まれる新型コロナウイルスの量を把握するための調査を専門家と進めていて、今月中にも第2波の予兆を捉えるために活用を始める方針とのこと。

下水調査を行い、新型コロナウイルスの流行状況を把握したり、その予兆を捉えようとする研究が始まっていることは、先月半ばから報じられていました。まさしく疫学調査です。

弊店の特集「ウイルスとの共生」で取り上げた一冊『感染地図ー歴史を変えた未知の病原体』の主役で、疫学の父と呼ばれる、ジョン・スノーの調査が思い浮かびました。

ジョン・スノーは、19世紀半ばにロンドンで発生したコレラ流行の原因を突き止めた医師です。

当時、その恐ろしい病の原因は、悪臭、すなわち、毒気のある瘴気(しょうき)であり、空気感染すると考えられていました。

しかしスノーが独自に調べを進めていくと、患者の家は飛び飛びになっていることがわかりました。もしそうなら、空気感染ではないのではないか。さらに初期症状として、下痢や嘔吐など消化器系に症状が見られること、患者発生地域が、ひび割れた下水管から漏れた汚水が井戸に混じりやすい劣悪な環境にあったことなどから、スノーは、コレラ特有の伝染性の生物が排泄されて、井戸水に入ったのではないかと推察しました。

これが、1848年のことで、スノーはその研究成果をしたため、自費出版して、世に問いますが、証拠が示されていないと学会から酷評されてしまいます。

1854年に、再びロンドンでコレラ発生。

スノーは自説を信じて、コレラで亡くなった患者などの住所と、使われていた井戸の場所を地図に落とし込んでいきました。そして、ある井戸の周辺に患者が集中していることを突き止めたのです。そして、衛生当局にかけあい、その井戸の水を使えなくするように、ポンプのレバーを取り外しました。

すると、死者は減少し、コレラ流行が抑えられたのです。

疫学者に求められること

東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻、略して東大SPHの講義パワーポイントでしょうか、がネットに上がっていました。

そのまとめには、こうあります。

疫学者には、
鋭い観察眼と、
深い洞察力と、
徹底したデータ収集能力と、
周りを引き込む人間的魅力と、
社会に流れされない強い意志が
… 求められる。

疫学の父と呼ばれるだけあり、スノーが行ったのが、まさしくこれです。結果を観察し洞察して、データを集めて、さらに洞察結果を補強し、周囲の協力を得ながら、反対に遭いながらも、原因を追求していきました。

観察して、洞察して……ジョン・スノーになれますか?

何も、疫学者でなくとも、仕事にも、生き方にも、デマ情報対策にも生かせる事柄ですが、実際のところ、なかなかに難しい。いや、ほんと。

たとえば、と、急に下世話な話になりますが、今週いちばんの話題と思われる、渡部さんの不倫報道。6月10日付けの中スポの記事、「不倫スキャンダル恐れて渡部建が印象操作? 「急に家庭の話しだしておかしいと思った」と山田美保子氏」にはこうあります。

以前から佐々木を守るため、2人の関係を公言しない姿勢を維持していたと解説した上で「先月と先週の土曜日のバラエティー番組で、おうちのことをべらべらしゃべりだしたんですよ。私これ、なにかあるってちょっと思っちゃいました」と振り返った。

渡部と同じ事務所のおぎやはぎ・矢作兼は、MCの坂上忍から「印象操作かなんか?」と話を振られると「今の聞いたらそれは完全に印象操作ですね。やりかねない男ですからね」と返し、スタジオの笑いをとっていた。

この、「おうちのことをべらべらしゃべりだした」という結果に対して、不倫スキャンダルを恐れたから、という原因との結びつきは、どこまで確かなのかわかりませんし、印象操作も何も、渡部さんの印象はガタ落ちです。うっかり信じてしまいそうなりますけれど。

他人の行動のことすら、安易な因果関係を認めてしまいがちですが、自身のことになると、もっとやっかい。いまの自分(結果)を正当化するために、勝手な原因をでっちあげてしまうこともままありますから。

話をもとに戻して……

ジョン・スノーを追いながら、果たして、自分なら同じような行動を取ることができるか、ポンプのレバーを取り外すことに到達できるか、また自身で行動できなくとも、スノーの味方になれるか。1854年の一週間をルポした『感染地図ー歴史を変えた未知の病原体』は、そんな読み方もできそうです。

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