特集 つながらないけれど、密ー手紙 

電子書籍か、紙の本か。

脳や認知的な側面からどのような影響があるのか、両者を比較した研究が続けられています。

今年に入ってからも、『デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳 ー「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』が出版されて、書評も散見されます。

電子書籍は斜め読みや拾い読みする傾向があり、ざっくり読んでしまう(確かに、目がスベります)。速読に向いたメディアといえるかもしれません。一方、紙の本は、比較的「深い読み」をする。1ページ、1ページを繰っていく読みは、はじめも、中ほどもあれば、後ろもあります。これが物理的・空間記憶に結びつくだからだといいます。

今、日頃目にする多くは、圧倒的にデジタル文字です。

ウェブサイトやブログ、メールに、LINEをはじめとするSNS。

日々、たくさんの文字を見るけれど、私たちはどこまで「深い読み」ができているでしょうか。またデジタル文字は、気軽に、手軽に発信できるだけに、良くも悪くも「書いて」「発信」することに対するハードルが低くなっていることは間違いないでしょう。

匿名で発信できることの影響も大きいです。

悲しい事件も起こります。

ひと昔前、手紙が書き文字の主要な交信手段だった頃、もう少し、人は書くことに慎重だったのでは、とも思います。

いまどき、手紙を書くことはめっきり減った、またはないという方がほとんどかと思いますが、手紙をよく書いていた世代の方が振り返ると、メールで交わされた私信より、手紙で交わされた私信のほうが記憶に残っていたりしませんか?

それは、紙の本と同じように、便箋や封筒の手ざわりがあること。郵便屋の郵政カブ(ホンダ・スーパーカブ)のエンジン音が増し、アイドリングが始まって、足音が近づいてくる気配、ポストに手紙がことん、と落ちる音から始まり(高層の集合住宅に住んでいると、聞こえてきませんが)、封筒を手に取り裏返し、うれしい名前を発見をして、急いで、しかし、中の手紙を傷つけないように気をつけてハサミを入れること。そんな一連の動作が一通の手紙に伴うことも、より記憶に深く刻みつけられる遠因ではないでしょうか。

そして、時間の長さ。

発信者の側からすれば、自分の言葉が相手に届くまで、またその返事をもらうまで、それなりの時間を要します。自分の書いた言葉が、相手にどのように受け取られるのか、大切な相手であれば、なお、返事が返ってくるまで、相手のことをどこかでずっと思い続けます。返事が返ってくれば、相手への思いを新たにして、またしたためて。返事がなければ、その思いはあちらへ、こらちへ。記憶の宙を彷徨います。

このまどころっこしい時間の長さも、手紙がより記憶に残る要因です。

デジタル文字は、記号化されて電子の網を駆けて、相手のもとへと瞬時に届きます。これは、すごいことです。見えないけれど、オンライン。相手とつながっているのですから。

手紙は、直にはつながっておらず、人がそこにたどり着くのと同じ時間をかけて、「旅」して、届けられます。

オンラインは、離れているけれど、つながっている。だから、〝密〟になれないWith コロナの時代に、人と人がつながれる手段として、いまあらためて脚光を浴びています。オンラインを通しての人とのつながり方は、新しい時代の社会様式の萌芽を予感させます。

だけど一方、始終つながれている(あるいは、つながるようにように要請される)オンラインの〝密〟な関係性というのも、これまた面倒という人もいるでしょう。

「手紙の間隔」の関係性や人と人とのつながりもまた、見直してもいいのではないでしょうか?

つながらないけれど、密。

ただ。
いまさら、手紙を書くのは、ちょっと面倒です。

けれども、手紙が介する、つながらないけれど、密な関係性も人にはあるんだ、ということは、いつも心に持っておいていいのではないかと。

旅の本屋 viaでは、いろんな立場、いろんな方の往復書簡や手紙を収めた本を集めてみました。

なかには、電子書籍で販売されているものもあるかと思いますが、そこはどうぞ、オフラインで「深読み」してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました