ペナン島と孫文ーはしがき3 

ペナン島ジョージタウンの孫中山記念館

2020年4月下旬、コロナ禍のなかで、ネットブックショップの「旅の本屋 via」をオープンしました。本によって旅が広がり、深くなっていく、そんな経験を自身のマレーシア旅行を通して、お話します。その第3回目です。

町屋のようなジョージタウンを歩くにつれて……

前回前々回ご紹介した『プラナカン––東安アジアを動かす謎の民』(著・太田泰彦/日本経済新聞社)と、旅行先を検索してヒットしたマレーシア・ペナン島が結びついて、わたしは、4泊5日の旅に出かけたのでした。

最初は、失敗した、と思いました。一度泊まってみたかった宿の「E&O(イースタン・アンド・オリエンタルホテル」に到着して、水着を持ってこなかったので、プールでぽちゃぽちゃ用にと、島一の60階建ての高層ビル「コムタ」周辺に買いに出かけたのですが、久しぶりの東南アジアの街。狭い歩道に溢れる人混みはともかく、車の交通量が多くて、ヨーロッパの小さな町のように、落ち着いてじゃらん、じゃらんと楽しめない。これが、イギリス植民地時代の街並みが残る世界遺産の街ジョージタウンなのか、と。

しかし街に熱気に、体が馴染むにつれ、京の町屋のような2階建ての長屋「ショップハウス」が続く路地をぶらぶら歩くにつれ、おもしろさが見えてきました。

ペナンはウォールアートの島で、ネコの島。歩いていると、あちこちで見かけます

ペナン島の地図を広げて

前もって行く場所を決めていたわけではありません。ガイドブックをぱらぱらしながら、地図と照らし合わせて行く先を決めていきます。

「ペナン・プラナカン・マンション」には行ってみたい。ここは『プラナカン』にも登場する、著者曰く奇妙な博物館で、もとはプラナカンの富豪の大邸宅。「いまはアンティーク商が所有者となり、およそプラナカンと関係がありそうな品物はすべてかき集めたという体で、骨董品が山ほど展示してある」とあります。

ペナン・プラナカン・マンションにて

また地図を見ていると、ジョージタウンには、ビショップ通りやシントラ通り、チュリア通りなどがあります。司教(ビショップ)が住み暮らし、教会が並んでいた通りなのかな、ポルトガルにシントラという町がありますから、ポルトガル人がいた名残かな、チュリアは南インドのイスラム系の海商を指し、この通りは彼らが商人街を形成していたのだろう、などと地名から歴史をかぎ取れます。そのなかにアルメニア通りもあります。

現在はカラフルな店舗が並ぶアルメニア通りとトライショー

コーカサス地方のアルメニアは、ユダヤ人と同じように、迫害を受けてディアスポラ(民族離散)の経験を持つ人々です。世界中に離散した人々がコミュニティを築き、それらをつなぐネットワークを利用してビジネスを展開し、アルメニア商人の名はよく通っています。遠路はるばるペナンにもコミュニティがあったのかと驚いていたら、そのアルメニア通りに「孫中山記念館」の名がありました。

孫中山記念館。うなぎの寝床のように間口が狭く、奥が長い。館主の方とお話していたら、
昔は現在よりもっと長かったらしいですが、道路を建設するために、カットされたのだとか

ペナン島には孫文の活動拠点があった

孫文がなぜペナン島に? これまた驚きでした。孫文のことは、辛亥革命の指導者であったこと、日本にもいたことくらいしか思い浮かびません。ネットで「孫文 ペナン」と検索すると、普通にわんさと出てくるので、「あ、これ、よく知られたことなんだ」と浅学を恥じるわけですが、それでもこうして、旅に出て初めて知ることがあり、発見があるのは楽しいことです。

孫文は清朝打倒の資金を調達するためにヨーロッパやアメリカまで旅していて(そのことも初めて知りました)、東京から追放されたのちにシンガポール、そしてペナンに短期間でしたが、活動の拠点を移しました。

孫文は清朝に追われながらも、資金協力を得るため世界中を旅しました

1910年11月13日、ペナン島の孫文は華人を集めて演説をぶって、これが共感を集めて8000海峡ドル(マレー半島のイギリス植民地で使用されていた通貨)という多額の資金を獲得。この会議が行われたのが、同盟会の南洋総部が置かれていた現在の「孫中山記念館」だったのです。そして、その資金は、1911年4月27日に広州で起こされた黄花崗蜂起に使われ、辛亥革命につながっていったのです。

孫中山記念館にポスターが貼ってあり知った映画『孫文 100年先を見た男』(2010年)。ペナン島時代の孫文が描かれています

ペナンは国際港として栄えていたといえ、そんな、私も知っている世界史の出来事とつながっていたとは思いもよりませんでした。しかしペナンにはそれだけ、華人のコミュニティの存在があったことが伺い知れるのです。

つづく

孫文の生涯を知る一冊

孫文の生涯をわかりやすく追った一冊。映画も角川、本書もKADOKAWAなので、映画の邦題はこちらから取ったのかもしれません。

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